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家庭の問題について

5.その他の問題

(1)生命保険の問題

1.受取人の記載が書き換えられた場合と相続人の権利



【 事例 】

A死亡(被相続人)
妻B 子C、D・・法定相続人、父E・・相続人ではない

AはF保険会社との間で生命保険契約を締結
(死亡保険金1500万円、保険受取人:当初はBであったが、その後不仲になったため、受取人をEに変更)

事例図説

A死亡の場合、B、C、DはEに対して、何らかの請求ができないか

※例えば、法定相続人には遺留分減殺請求権:民法1031条があるが、これを根拠にして、受取人の変更行為がEに対する遺贈または贈与であるとして、減殺請求権を行使して、遺留分に相当する保険金について、自分が支払い請求権を有すると主張すること

[ 答え ]


同様の事例が最高裁で争われました。
結論としては、最高裁はBらの訴えを認めませんでした。
―最判平成14年11月5日
理由:
受取人の変更行為は、民法1031条の遺贈や贈与にあたらないし、これに準ずるものでもない。
Eが取得した保険金請求権は自己の固有の権利として取得するのであって、Aから承継取得するものではない。
解説:
死亡保険金の受取人は保険を契約した当事者が自由に指定することができますし、指定した後に受取人を変更することもできます。
保険契約者が死亡保険金の受取人を第三者に指定した場合、判例・通説によれば、指定された者は自己固有の権利として原始的に死亡保険金請求権を取得するのであって、死亡保険金請求権は相続財産ではない、と解されています。

したがって、本件のような場合、Bらが遺産分割請求として死亡保険金の請求をする余地はありません。
そこで次の方法として、Bらは、Eが死亡保険金を受け取ったことをもって、遺留分減殺(いりゅうぶんさい)の対象となる遺贈または贈与に該当するか、これに準じると主張して、その取り戻しを請求したわけです。
「遺留分」というのは、一般に、人は自分の財産を自由に処分できるのが原則であり、生前に贈与という形で、死後に遺言による遺贈という形で、特定の人間に財産の全てを譲渡することが可能です。しかし、法定相続人の生活の安定、家族財産の公平な分配といった配慮から、法は一定の場合にこうした財産処分の自由を制限して、被相続人がした贈与や遺贈といった財産処分を、法定相続人が一定限度で取り戻す権利を認めています。これが、「遺留分」と言われる制度です。本件の場合であれば、仮にAが高額な不動産をEに贈与していたような事例であれば、Bらは、その不動産贈与を「遺留分侵害」として、減殺請求(侵害した範囲の取り戻し請求)が可能なわけです。
しかし、本件では最高裁は結論として、死亡保険金の受取人の指定の変更は、遺留分減殺の対象となる贈与または遺贈ではない、としてBらの請求を棄却しました。
死亡保険金請求権の性格が相続の対象となる資産ではないとされている以上、最高裁がこのような結論をとるのは当然と言えるでしょう。

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