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家庭の問題について

5.その他の問題

(1)生命保険の問題

2.遺産分割の際に、死亡保険金を受取った者は、これを特別受益にあたるとして、持ち戻しをしなければならないか



【 事例 】

A死亡(被相続人)
妻B−Aに次いで死亡 長男C 長女D他2名・・法定相続人

AはE保険会社との間で生命保険契約を締結
(死亡保険金500数十万円、保険受取人C)

事例図説

A死亡の場合、Dら3名はCに対して、何らかの請求ができないか

※例えば、Cが受領した生命保険金は特別受益:民法903条1項に該当するとして、これを根拠にして、特別受益分の持ち戻しを主張できないかー持ち戻しをすべきということになると、その分だけ本来の遺産の中からのCの取り分が減る

[ 答え ]


同様の事例が最高裁で争われました。
結論としては、最高裁はDらの訴えを認めませんでした。但し例外的に保険金請求権を特別受益に準じて扱う場合があることは認めました。
―最判平成16年10月29日
理由:
死亡保険金は、民法903条1項の遺贈や贈与に係わる財産にあたらない。但し、相続人間の不公平が顕著になるような特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、死亡保険金を特別受益に準じて持ち戻しの対象とするのが相当である。
解説:
Q1と同様の事例で、今度は死亡保険金を受け取れなかったDら3名は、別の理屈を考えました(正しくは、Dら3名の代わりに弁護士が考えたというのが実情でしょう)。つまり、遺留分の減殺が駄目なら、遺産相続にあたって特定の相続人に贈与や遺贈がなされている場合(これを「特別受益」と言います)に、その分を加味して相続分が計算し直されること(「持ち戻し」と言います)がありますが、Cが取得する死亡保険金請求権または取得した保険金は持ち戻しの対象となる特別受益にあたる、と主張したわけです。(ことほどさように、法律家というのは何かと理屈を考えるのが上手で、一筋縄ではいかない嫌味な存在ですね。)

とは言え、死亡保険金の金額は多額になる場合もあり、そのような場合に保険金を全くもらえなかった相続人との間で不公平が生じるのは事実ですから、Dらがこのような主張をすることに無理からぬ部分もあるのです。

ところが、この主張に対しても最高裁は言い分を認めませんでした。

つまり、死亡保険金請求権も保険金も持ち戻しの対象となる贈与または遺贈に当たらない、と判示しました。しかし、法定相続人間で是認することができないような著しい不公平を生じるような特段の事情がある場合には、例外的に、特別受益に準じて、保険金請求権を持ち戻しの対象となることを認めました。

この点について、学説には肯定説、否定説含めて4つ考え方があったようです。死亡保険金請求権が相続財産に含まれないという考え方を前提にすれば、贈与や遺贈に含めるのを否定するという最高裁の考え方に行きやすいのでしょうが、相続人間に著しい不公平を生じるような場合に例外的に特別受益になり得ることを認めた点が評価できます。

それでは具体的に、どのような場合に最高裁判決の言う特段の事情のある例外的なケースと言えるか、一概に例示することは難しいでしょうが、考慮される要素としては、@保険金の遺産総額に対する割合A被相続人との同居、介護の有無といった親近さB貢献度C相続人の生活実態等が考えられるでしょう。

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