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家庭の問題について

5.その他の問題

(1)生命保険の問題

3.妻を死亡保険金受取人に指定した場合―離婚の際にその指定を変更していなかったら、保険金を受け取るのは誰か



【 事例 】

A(夫) 保険金受取人を「妻B」とする保険契約を締結した後、妻Bと離婚。
離婚後も保険契約を継続。Cと再婚。その後死亡。

妻B 長男Dら・・法定相続人

事例図説

A死亡の場合、Bは死亡保険金を請求できるか。もしできないとしたら誰が請求できるのか。

[ 答え ]


同様の事例が最高裁で争われました。
結論としては、最高裁はBを保険金の受取人として認めました。
―最判昭和58年9月8日
理由:
生命保険契約で保険金受取人が「妻何某」と指定された場合には、その氏名をもって特定された者が受取人として指定された趣旨であり、その場合、それに付加されている「妻」という表示には受取人としての意味を示すような特段の趣旨はない。したがって、離婚でBが妻の地位を失ったとしても、Bは保険金受取人としての地位を失うものではない。
解説:
結婚した夫婦では、夫が自分を被保険者として契約した生命保険契約において、妻を死亡保険金の受取人に指定するケースは多いのですが、離婚した場合に、生命保険契約は継続したまま受取人の指定を変更しないことはしばしば起こります。というのは、離婚する場合に、財産分与や慰謝料請求には頭が回るのですが、保険金の受取人の変更にまで頭が回らないからです。こうして、離婚後双方とも忘れたころに夫が死亡して、しかも、夫が別の女性と再婚していたとすると、死亡保険金を誰がもらうのかが争いになる可能性があります。
妻を受取人にする場合にも、保険証書の受取人欄の記載方法は限定されていないから、いろいろな記載をする可能性が残されています。具体的には、もっとも単純なのが@ 「妻」とだけ記載する場合であり、次に考えられるのがA「B」というふうに妻の氏名を記載する場合であり、B第3番目にあり得るのが、本件のように「妻B」と記載するのは両者を折衷したような記載方法であり、これは、妻という身分の表記と氏名の記載による特定個人の表記とを併記しているわけです。
このうち、第の場合については、判例上、「相続人」という受取人の記載については契約者の合理的意思は、保険事故発生時の相続人を指定したというところにあると解されていることから、「妻」という指定の場合も、保険事故発生時の妻という身分を有する者が指定されたと見るのが相当です。したがって、この場合に受取人の権利を有するのは離婚したBではなく、A死亡時に妻であったCということになります。
次に、第の場合には、身分と関係なくBという特定人が指定されていますから、この場合には問題なくBが受取人の権利を持ちます。
やっかいなのは、第の場合の解釈であり、契約者の意思が、保険事故発生時に妻という身分を有する者を保険金受取人に指定したのか、それとも、Bという特定人を指定したことに主眼があり、妻という記載は付け足しのようなものと考えたのか、そのどちらと考えるのか、という問題です。最高裁や福岡高裁は後者の考え方を取ったようですが、1審の大分地裁は前者の考え方を取ったようです。
普通の夫の意思として、受取人に「妻」とわざわざ記載するのは、妻というつながりがある者であるからこそ、いざという時に備えて生活保障の意味で死亡保険金を残そうとする趣旨であり、したがって、受取人に「妻何某」と記載した場合には、「妻」というほうに重点があり、「何某」という表示は「契約時点における妻の呼称」を表示したにすぎないのではないでしょうか。つまり、このような場合には、夫の意思は保険事故発生時の妻(すなわち夫が再婚して死亡した場合、再婚した妻が受取人になる)、と考えるほうが自然のように思うのですが。皆さんはいかがでしょうか。いずれにしても、このような判例がある以上、第3の場合のようなまぎらわしい受取人の指定は止めたほうがいいですね。それに、このような受取人の記載の仕方をしている夫は、離婚の際、受取人の記載の仕方を変更する必要があるように思います。

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